足跡

好きになったら激重感情しか持てないオタクの自己開示の練習所と備忘録を兼ね備えた場所

わたしの色彩オーケストラ

 

 

※この文章は自分向けに書き残していたお気持ちを清書したものです。

※あれから2年経つのと、今ちょっと推しに対して情緒不安定なんだけど、これを書いたときの気持ちに絶対に嘘偽りはないっていう証を残したくて公開します。

 

 

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2021年、春。

世界の状況が一変して1年が経つ頃、私は今までの人生でいちばん情緒不安定な4月を過ごしていた。

 

3回目の緊急事態宣言が出るかもしれない、そうしたらイベントの開催に制限がかかるかもしれない。

5月2日に斉藤壮馬LIVE TOUR2021「We are in bloom!」の大阪公演に参加して、5月8日にミュージカル刀剣乱舞「東京心覚」を観劇する予定だった私にとっては死活問題だった。

 

ここではその話は端折るけど、私にとって好きな歌手のライブに行くということは、ずっと無意識にもう二度とないと思っていて、特別なことだった。

だから私は好きになってから初めて開催される斉藤壮馬のライブにどうしても行きたかった。

このライブツアーに行けなかったら、今後彼を応援する上で心に消えないしこりが残る気がして、それが嫌だった。

 

半年前には刀ミュでいちばん大好きで特別な公演である「幕末天狼傅」の再演のチケットを払い戻していた。

仕方ないことだったのは分かってるけど、これからもきっと一生引きずる。

天狼傳に限らず、私はこの1年の内に行くはずだった現場のチケットは全部払い戻してる。

もうこれ以上、あんな思いはしたくなかった。

 

 

4月17日、福岡公演からツアーはスタートした。

ライブグッズも手元に届いてこの頃まではどうにかはしゃげていた。

 

 

4月22日、誕生日ということでFCで生配信をしてくれた。

友人が付き合ってくれて、ケーキを食べて1stライブの円盤も一緒に見てもらって、本当に楽しかった。

不安な気持ちが少しだけやわらいだ。

余談ですが、この友人は私にハイキュー!!を教えてくれた人で、私はそれで斉藤壮馬さんの名前を知ったので彼女が巡り会わせてくれたといっても過言ではないです(?)

ありがとう。

 

 

4月23日、3回目の緊急事態宣言の発令が決まった。

期間は5月11日まで、ライブ開催地である大阪も対象に入っている。

イベントは無観客以外の開催に休止を要請するという文言は嫌でも目に入った。

 

 

4月24日、この日は名古屋公演。

ライブ終演後に大阪公演の開催については明日お知らせしますというツイート。

覚悟しなきゃいけないと思いつつも、できる気がまったくしなかった。

5月8日に観劇予定だった刀ミュはこの時点で中止のお知らせが出ていた。

 

 

4月25日、仕事だったけど周りに誰もいないときはほぼ泣いていた。

だめな社会人過ぎる。

夜になると延期、もしくは中止のお知らせがアップされた。

私は5月2日、斉藤壮馬のライブに行けない。

 

 

4月28日、この日はダメラジ放送日。

相方に音楽活動が楽しいとうれしそうに話しているのを聴いてべそべそに泣いた。

 

 

4月29日、この日はオッドタクシーの配信イベントを見た。

全然泣く内容じゃないのに泣きながら見ることしかできなかった。

当たり前過ぎるんだけど大阪公演がなくなったことなんか微塵も感じさせない態度だった。

イベントを見終わったあとは本当はライブ当日に備えてのはずの美容院だった。

終始涙目で縮毛矯正の施術を受ける客に美容師さんはさぞかし困惑したでしょう。

すみません。

 

 

4月30日、個人ラジオの放送日。

大阪公演の中止は決まってない世界線にいる彼は楽しそうに初日の感想を語っていてまた泣いた。

ここ数日であまりにも泣きすぎて目の周りが痛かった。

 

 

そして5月2日。

この日を家でひとりで過ごすことが無理すぎると判断した私はとある友人グループに通話に付き合ってもらって気を紛らわすことにした。

事情を聴いた友人たちは慰めてくれて、私が言語化できずに抱えていたモヤモヤを言い当ててくれて、それを聴いた私は泣いて、楽しい話もいっぱいして、深夜1時くらいに再び泣き始める面倒なオタクに付き合ってくれて本当にありがたかった。

この人たちが友だちでよかったと心から思った。

ーーー𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬

 

 

5月7日、個人ラジオの放送日。

大阪公演がなくなったあとの収録だとわかってたから、聴くのが怖かった。

「さみしいけどどうやって次に繋げるか前向きに考えてる」と言ってくれて、私も泣いてばっかりじゃだめだなって思った。

 

 

5月8日、ミュージカル刀剣乱舞「東京心覚」を観劇するはずの日だった。

大阪公演の中止に伴って、初日の再配信をしてくれるのがちょうどこの日だったので見ることにした。

 

 

「東京心覚」には今までの刀ミュの公演と違う部分がいくつかあった。

その公演に出陣する刀剣男士は6振りではなく8振りで、ひとつの時代にひとつの任務での出陣ではなくて、そして話の内容にとてもメタ要素が含まれていた。

細かい内容は置いておくけど、この公演の主人公ポジションである水心子正秀は任務の中で思い悩む。

 

 

「たくさんの人が悲しい思いをしている」

「私が守ろうとしている歴史は、未来は、守るべき価値があるのだろうか」

 

 

その歴史には2021年、コロナ禍の「今」も含まれている。

そして終盤、2205年という舞台上にいる水心子は客席の、画面越しの私たちに語りかける。

 

 

「君はここに来たかったんだね」

「もしかしたら来ないことを選んだろうか」

「悔しかっただろうね」

「どんな決断であろうと君の決断を尊重するよ」

「来た人、来れなかった人、来ることを選んだ人、来ないことを選んだ人」

「みんな何が正しいかなんてないんだ」

「君の想いはとどいてるからさ」

「ありがとう」

「それから…お願いがあるんだけど、」

「どうか傷つかないでほしいんだ」

「この時代に、現実に、君自身が選んだことに」

「伝わるかなぁ…伝わるといいなぁ」

 

 

 

5月13日、大阪公演の中止が正式に決まった。

それと同時にいくつかのお知らせが出た。

ひとつは5月23日、東京で行われる千秋楽のライブ配信の詳細、もうひとつは東京公演の払い戻し席を再販するというもの。

 

5月23日は元々千秋楽の配信を見るつもりで休みは取ってあった。

 

きっと正しい行動ではない。

緊急事態宣言は出てるし、ワクチンもまだ打っていない。

罪悪感も迷いも恐怖もあったけど、数日前に聴いた水心子の台詞は私の背中を押した。

 

 

誰かに「行っていいよ」って言って欲しくて、壮馬さんの誕生日を一緒に過ごしてくれた彼女にだけ行くことを打ち明けた。

「楽しんできて!」って言ってくれて本当にありがたかった。

 

 

5月23日、数年ぶりに新幹線に乗った。

品川駅に降り立っただけで涙が出そうだった。

会場に近づくにつれて、目的地が同じであろう人が周りに増えていく。

中に入ると、伝わるかわかんないけどあのライブ会場特有の霧がかったようなぼやけた空気がそこにはあって、久しぶりに味わう感覚にまだ泣くには早いと必死で上を向いた。

永遠のような一瞬のような開場から開演までの時間が過ぎ去って、ライブが始まる。

客席の明かりが落とされて、みんなが立ち上がって、ペンライトが灯り、会場はミントグリーンの光で満たされた。

 

 

1曲目、フィッシュストーリー。

泣かない方が無理だった。

念入りにした化粧はたぶん30秒くらいで流れ落ちたと思う。

個人的に絶対に絶対に絶対にこの曲で始まってほしいと思っていた。

壮馬さんを好きになってから、七色の夜に連れ出してもらえる日をずっと待っていた。

 

 

シュレディンガー・ガール、デート、MCを挟んで、夜明けはまだ、ペトリコール……

 

約1年半ぶりの現場、約10年ぶりの好きな歌手のライブ。

楽しくペンライトを振ったり、MCで笑ったりしながらも、頭の片隅にある「本当に来てよかったんだろうか」という気持ちはずっと拭えなかった。

 

 

もう一度MCを挟んでmementから壮馬さんもギターを弾くパートが始まる。

MVでも使われていたピンクのテレキャス

そのあとエピローグを歌い終わって、一度ステージ上は暗くなって、次の曲が始まるまで少し間があいた。

再び明るくなったステージには白いギターに持ち替えた壮馬さんが立っていて、パレットのイントロが流れた。

「あ、パレット歌うな」と分かった瞬間、びっくりするくらい涙が出てきた。

一瞬の静寂、壮馬さんのシャウト、ギターとドラムの爆音。

LEDのパネルには絵の具が広がる映像が映し出されて、それらを浴びた瞬間、ペンライトを振るのもままならないくらいに泣いてしまった。

 

 

 

正しいとか間違いとかじゃなくて、この瞬間のために私は今日ここに来たんだと思った。

 


バンドメンバーさんはみんな黒い服を着てて、壮馬さんの衣装とギターだけが白くて、それがスポットライトで照らされて色づいて、LEDの映像も鮮やかで、本当にきれいだった。

 

 

本編ラストの曲はいさなだった。

「最後の曲です」って言われて「嘘でしょ!? 体感10分くらいなんですけど???」って泣きながら思った。

CDの音源で聴いてるときは「この曲をライブでやるとしたとして、ペンラを振るような曲ではないのでは……?」って思ってたけどそれは大間違いだった。
青いペンライトの光で染まった会場は、まるで海の中だった。

名残惜しいのと、どうしようもなく優しい歌声にまた泣いた。

 

 

アンコールではSummerholic!とcarpoolを歌ってラストは最後の花火だった。

私は壮馬さんの作った楽曲の中で最後の花火がいちばん好きで、絶対に絶対に絶対に最後はこの曲で締めてくれると信じていた。

またべそべそに泣いてしまうかと思ったけど、この曲はちゃんと笑顔で聴けた。

 

 

私がこの曲がいちばん好きな理由はいろいろあるんだけど、そのひとつがメッセージソングを書かないと決めている彼が「次」への想いを込めて作ってくれた曲だからだ。

コロナ禍だろうとそうでなかろうと、応援している人が心身ともに健康で、じぶんの望むかたちで元気に活動してくれて、私も向こうも同じ熱量をもったまま「次」も会える機会があるというのは本当にすごいことなのだ。

この先のことがどうなるかなんてわからないけど、私は斉藤壮馬さんが提示してくれる「次」を信じて、期待して、待つことができているのが本当にうれしい。

これからも何度だって「さよならはまだ次にとっておくよ 」「ほら また光るよ」って歌ってほしいと思う。

 

 

 

話は少し逸れたけど、こうして私の久しぶりのライブは終わった。

東京公演が開催できて、ライブに参加した他の方、関係者の方、そして私自身が感染しなかったのはあくまで結果論だということは肝に銘じているつもりで、私が取るべき行動は自宅で大人しく配信の方を見ていることだった。

それでも、あの日ライブに行く選択をしたのは正しくはなくても、私にとっては絶対に間違いじゃなかったと思っている。

 

本当に行ってよかった。

 

 

世界に色が戻るってきっと、ああいうことだと思う。