私がこの本を手に取ったきっかけは推しである斉藤壮馬さんが折に触れて紹介していたからだ。
今までにも数度、彼の口からタイトルをきく機会はあったが、この記事を繰り返し読むうちにふと「この本を早く読んでみたい!」という衝動に駆られ書店で手に取るに至った。
私が壮馬さんのオタクじゃなかったら絶対に手を出さなかった本のひとつであると思う。
文章の癖は強いし、暴力の描写は読んでるだけで痛いし、その部分はいっそ読み飛ばしてしまおうかとも思ったし、展開も主人公の思考もハチャメチャ。
けど謎の疾走感のおけげでチャッチャッチャと読み終わってしまった。
読み終わってから次の本に手をつけるまでは頭の中で四郎がずっとあの口調で喋ってる感覚があってちょっとおもしろかった。
あらすじだけ読んだ時点ではミステリやバイオレンスの要素が主軸なのかな?と思っていたけど、奈津川家の背景がひとつ明かされるたびに「家族」について強く考えさせられた。
不思議な読後感だった。
私は顔を合わせるたびに結婚やらなんやらの話をしてくる方の父方の祖母にはちょっと辟易しているし、父に威圧的な態度を取られて悲しかったり怖かったりしたことは一度や二度ではないし、障がい者である弟の存在をコンプレックスに思ってしまうことも多い。
けど、それは私が彼らのことを嫌う理由にはならない。
四郎が自分の家族に抱いてる感情は好きとか嫌いで区別できるものではないと思ったし、それは私だって同じだ。
まさかこんなしっちゃかめっちゃかな物語に自分のそういう気持ちに寄り添ってもらえた感覚になるとは思わなかった。
そして私は一昨年に母方の祖父と叔父、今年の夏に母方の祖母を亡くしている。
4人家族だった母の実家はこの2年の内に叔母ひとりになってしまった。
父方の祖父母もまだ生きているけど、もうかなり高齢だ。
こういうことが身の回りに起きる年齢になったからこそ、この本に出会えてよかったなと思えた気がする。
正直好きな話だった、とは言い難いけど忘れられない1冊にはなった。